Kinowa 槐(えんじゅ)との出会いから

槐(えんじゅ)との出会い

千葉県大多喜町にある、ちば山のストックヤードで
乾燥中の槐(えんじゅ)の輪切りに出会いました。

2018年3月、NPO法人ちば山の木材乾燥用ストックヤード。
槐(えんじゅ)の輪切りと出会いました。

ちば山理事の丸正林業さんが入手した槐を
輪切りにして乾燥していたものです。

槐とは


槐は、中国北部原産の落葉広葉樹の高木。

推古天皇36年(628)3月18日、
隅田川で投網にかかった観音像を
最初に安置したのが槐の木の切株。
この観音像が、浅草寺の御本尊です。

浅草神社の境内には、
今でも槐が自生しているという
浅草にとっても縁のある木です。

また、槐は、延寿や縁授とも書かれ
縁起の良い木としても扱われています。

槐の輪切りを形に


槐は堅い木で磨けば美しくなります。
ゆっくりと乾燥すれば、割れが入りづらいのも特徴。
ヒノキやスギの輪切りは、ほとんどが割れてしまいます。


100枚ほどを預かり、
乾燥してから
魅力のある形に仕上げたいと考えました。

槐(えんじゅ)を手で磨く


槐は堅い木だといっても、
手作業で磨けるだろうと甘く考え
ワークショップで使おうかと思っていました。

まずは、ワークショップを目指して
実際に手で紙やすりなどを使って磨いてみることに。

紙やすりなどを使い手で磨く

磨き始めて気がついたこと。
製材所で輪切りにした時の
ノコギリの刃の跡がついていて
それを平らにするのが大変。

槐の木が硬いので、なかなか、綺麗に磨けません。
筋肉痛になりながら、1時間磨いても終わりません。


まわりの部分は、柔らかい木の皮が残っているので
ヤスリだけで削るのは大変です。
そのため、カンナで大まかに削っておきます。

そして、ヤスリで仕上げ。
これも大変な作業です。


2時間頑張っても1枚も完成できず。


それでも、磨ききれれば、
スベスベ、ピカピカになることは確認。

数人に、ピカピカ、スベスベの槐を見てもらうと
かなりの好印象。
一度しっかりと仕上げる必要があります。

すぐに、製材所に連絡、
後日、電動サンダーを貸してもらうことになりました。

槐(えんじゅ)をベルトサンダーで磨く


手作業では、1時間かけても、この程度。
綺麗に仕上がったのはごく一部。


製材所で、電動工具を借りて仕上げることにしました。

ベルトサンダー


製材所の片隅に置かれているベルトサンダー。
年数回しか使っていないようなので
活用させていただきます。


操作は簡単、オンとオフのスイッチ、
たまに、ずれてきたベルトの位置を調整するだけ。


手作業に比べて、かなり効率的です。
とはいえ、危険な電動工具、安全第一!
軍手、メガネ、マスクを着用。
指先が触れたら爪などは一瞬で無くなりそう。
ベルトの力で、槐の輪切りが3メートルくらい先まで飛ばされることも。

集中して、怪我のないことを最優先にします。


述べ2時間ほどで、槐の輪切り磨き6枚。
とても綺麗に仕上がりました。
完成度85%くらい。

課題も


今回使ったベルト状のヤスリは
目が細かく、仕上げ用でした。
目の粗いものを使えば、もう少し簡単に削れそうです。


また、力を均一にかけないと
力のかかった部分だけ削れてしまい
同じようなところを何度も削ることになり
非効率になってしまいます。

実際に自分自身で作業を行うことで
課題や改善点が見えてきました。
ヤスリの目の調整や操作レベルの向上で
1時間に5枚くらいはいけるようになるかと思います。

そして、もうひとつ分かったことが
機械を使った作業は楽しいということ。
モノづくりに集中する時間は大切で楽しい。

槐(えんじゅ)磨き仕上げ


製材所のベルトサンダーで磨いた槐の輪切り。
これで完成ではありません。

水拭き、オイル仕上げ


まずは、柔らかな布で、
水拭きをして
汚れを落とします。

しばらく放置して
表面が乾燥したら
食用油を薄く塗ります。

亜麻仁油がいいのですが
手元にあったグレープシードオイルで試しました。

色が濃くなり、落ち着いた感じになり
高級感がアップします。
写真上がオイルを塗る前
下がオイルを塗った後です。


陽にあたると、この美しさ!
自然が創った年輪の美しさが引き立っています。

裏面の仕上げ


裏面に多少の傷を残して完成とすれば
磨く時間が節約できます。

さらに、裏面に多少のざらつきがあった方が
テーブルの上などで滑りにくくなります。

2つのメリットから裏に鋸の傷跡を残したものを作ってみました。
上の写真は、その裏面です。

均等に傷跡を残すのは難しく、
今ひとつですね。

もう一度仕上げ処理


オイルを塗って完成にしたかったのですが
細かなところが気になります。
表面、サイドやエッジ部分の気になる所を
もう一度、目の細かな紙やすりで仕上げます。

裏面は、鋸の傷跡が目立ちすぎていたので
紙やすりで、少し目立たなくなりように仕上げました。

最後に、もう一度汚れを水拭きし、乾燥、
オイルを薄く塗って、1号試作は完成としました。
そして、いろいろな方から意見を聞こうと思います。

おまけ


これは、左半分だけオイルを塗ったもの。
オイルを塗って完成とするのではなく
塗るか塗らないかは、
使う方の判断にお任せする方法もありそうです。

槐(えんじゅ)の輝き小宇宙

コアウッドにも匹敵する!?

槐の角度を変えながら見ていると
様々な表情を見せます。


それは、ハワイの希少な木、コアウッドのようです。
カマカのウクレレの輝きは素晴らしい。
でも、槐の輝きも負けていません。


槐は、コアウッドにも匹敵する素敵な輝きを生む木です。
こんな素晴らしい木を
木材ストックヤードの片隅に
眠らせておくわけにはいきません。